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理由は採用部品の品質基準未達と発表されたが、先に述べた「ネットワークウォークマン」と同種商品である以上、Sブランドより先に市場導入されることなど許されなかったのではないか。
その後、Aの「USBオーディオ」から目立った商品は出てこない。
おそらく、全体戦略の再検討により、そのコンセプトが目ざわりになっているからであろう。
普通の会社になれない企業I氏は、2004年6月に開催された株主総会においても、株主から、ヒット商品不在を追究され、「ヒット商品がないと言われればその通りかもしれない。
しかし、エレクトロニクス部門だけでも5兆円もの売上が維持できているということは、それなりに我々の商品が評価されているとも言えるわけで……」と口ごもりがちに答えている。
Aの「USBオーディオ」戦略を取り込んだも同然である。
「S・ショック」の直接的な引き金になった「V」を再建しない限りSの復活はない。
「トランスフォーメーション」の立案段階ではそのような各論まで踏み込まれた形跡はないが、その後の商品戦略の議論の中で、パソコン本体だけでは差別化は困難であるという結論に達したものと思われる。
そのためには、先行していた「USBオーディオ」などは邪魔になる。
Sは90年代初頭のカンパニー制の採用以来、それぞれの分野の独立性が尊重され全社的な戦略が後退していった。
このまま放置すれば「USBオーディオ」と「V」は、身内でカニバリ(食い合い)を起こしたはずである。
問題は芽のうちに摘みとることが重要だという遅ればせながらの判断が働いたに違いない。
しかし本来、「A」ブランドは、「S」ブランドとは別であり、Sが手を出せない領域で挑戦的な開発を行うことに存在理由があったはずだ。
「USBオーディオ」は、Sの中期計画である「トランスフォーメーション」が提起した総合戦略の犠牲者である。
「Sのブランドカが落ちてきているのではないか?」最近、そのような質問がアナリストや記者からS首脳にぶつけられることが多い・I氏などは、思わず言葉を荒げて、「うち以上に強いブランドがどこにあるんだ!」とまで言う。
Sブランドの強さは、言うまでもなくSを支持する顧客によって支えられている。
顧客満足度が一般企業並になったとすれば、いつまで、顧客の支持を得られるのであろうか。
その意味で神話企業とは「普通の会社」であることを許されない企業である。
創業者の時代から集積されてきた「神話への期待」は、今も多くの顧客の胸中にある。
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